日本

太陽光発電システムの性能を最大化する、試運転の 3 ステップ

再生可能エネルギー

技術がどれだけ優れていても、絶対に故障しないシステムはありません。試運転の役割はそこにあります。お客様による受け入れとその後のメンテナンスのために性能の基準値を確立します。試運転は、太陽光発電 (PV) システムの性能のためだけでなく、機器の寿命、安全性、ROI、保証のためにも重要です。

ソーラー・パネルの列の端に立っている、ヘルメットをかぶった 2 人の男性の写真

ステップ 1: 太陽光発電システムの設計および発電量

お客様の設備で想定通りの発電量を得るには、太陽光資源を特定し、パネルにかかる日陰の可能性を考慮します。太陽光資源はピーク日照時間で測定されます。この指標は、設備が 1 平方メートル当たり 1,000 ワットの発電量を 1 日に何時間確保できるかを表します。たとえば、カリフォルニア州の多くの地域では、太陽光資源が非常に優れており、1 平方メートル当たり 6,000 ワット、つまり 6 ピーク日照時間に達します。Fluke IRR-1 太陽放射照度メーターを使って、現場の実際の太陽放射照度 (W/m2) と日陰を特定し、基準値を作成します。

たとえば、10 kW の PV アレイがあるとします。想定年間発電量は、10 kW アレイ x 6 ピーク日照時間 x 365 日/年 x 0.85 (配線およびインバーターの電力損失による 15% のディレーティング) で計算できます。このアレイは、年間 18,615 kWh (51 kWh/日) を発電します。

ステップ 2: PV 性能の測定

システムが設置されたら、システムの電気特性とアレイの実際の出力を測定して、設計どおりに動作していることを確認します。

PV アレイの性能は、電流・電圧 (IV) 曲線に基づきます。インバーターは、DC を AC に変換するだけでなく、ストリングで発生した最大電力の電流と電圧を捕捉することで (電力は電圧 x 電流であるため)、出力を最大化します。短絡電流 (Isc) はセルの最大電流です。正と負の配線が接触して電圧差がないため、電力は発生しません。開放回路電圧 (Voc) はセルの最大電圧です。回路が断線しているため、電力は発生しません。モジュールで最大電力が発生するポイントは、最大電力点 (mpp) と呼ばれます。

太陽電池の IV 曲線と太陽電池の電力を比較したグラフ

PV モジュールの電流・電圧 (IV) 曲線

アレイが設計どおりに動作しているかどうかを確認するには、モジュール・データシートに記載されている Voc と Isc を確認する必要があります。設置前と後の Voc と Isc を測定します。

Voc を測定するには、Fluke 393 FC CAT III クランプ・メーターを使用して、正負の端子間の電圧を測定します。393 FC は CAT III 1500 V/CAT IV 600 V 定格で、ソーラー設備などの CAT III 環境において、安全で信頼性の高い測定を行えます。Fluke 64 MAX IR 温度計を使用して、モジュールの温度を測定し、Voc への温度の影響を考慮します (温度が低いほど電圧が高くなります。逆も同様です)。393 FC は、Voc のテスト時に、音声による極性警告を発します。極性を逆にすると、コンバイナー・ボックスやその他の回路が誤って直列に接続され、インバーターの最大入力電圧を超える電圧が発生する可能性があります。

右に Fluke 393 FC CAT III 1500 V True-rms クランプ・メーター、左に Fluke Connect アプリがスマートフォンに表示された写真

Fluke 393 FC は、世界で唯一の CAT III 1500 V 定格クランプ・メーターであり、ソーラー設備に使用できる安全性と信頼性を備えています。

Isc をテストするには、すべての並列回路の接続を外し、回路を安全に短絡させます。マルチメーターを使用して、正負の端子間の電流を測定します。想定される電流よりもダイヤルを大きく設定します。Fluke Connect™ アプリに Isc と Voc の値を記録し、トレンド分析とレポート作成のために保存します。

導体の絶縁抵抗、モジュール間の接続、モジュールとラック間の接続、およびグラウンドに対する抵抗を確認します。Fluke 1630-2 FC 接地クランプを使用して接地抵抗を測定し、抵抗が 25 Ω 未満であることを確認します。

ステップ 3: 変動の診断

正しく設置しても、PV システムの発電量が想定に満たない場合があります。インバーターには最小および最大入力電流があり、範囲を外れると出力がなくなるため、モジュールに電気特性が指定されていることが非常に重要です。

シナリオ 1: 開放回路電圧または短絡電流がデータシートの値より高い、または低い

この場合、仕様を満たしていないモジュールがストリングに 1 台以上あります。開放回路電圧が範囲外の場合、インバーターが出力しない可能性があります。短絡電流が範囲外の場合は、モジュールに不一致がある可能性があります。この場合、最小電流のモジュールによってストリングの電流が制限されるため、アレイの性能が著しく低下する可能性があります。モジュールを特定して交換します。

Fluke 393 FC CAT III 1500 V True-rms クランプ・メーターを使用して PV パネルの差異を診断する写真。

Fluke 393 FC は、電圧、電流、DC 電力の測定が可能で、PV パネルの誤った極性を警告するオーディオ・インジケーターを備えています。

シナリオ 2: 出力が低い

出力が想定よりも低い場合は、問題が発生している可能性があります。ある程度の出力変動は予想されますが、想定出力よりも一貫して低い場合は、ストリングの不具合、地絡、日陰などの影響が考えられます。

原因の 1 つにホットスポットがあります。短絡したセルに電流と熱が蓄積され、性能低下や火災につながるおそれがあります。Fluke Ti480 PRO 赤外線カメラTiS75+ サーマル・カメラなどのサーモグラフィーは、ホット・スポットをすばやく特定できます。

地絡も原因の 1 つですが、診断が難しく、各導体と機器接地導体 (EGC) の電圧と電流のテストが必要です。EGC はグラウンドに迷走電流を流します。EGC の電圧と電流は地絡を示します。地絡は、導体の絶縁体の損傷、不適切な設置、挟まれた配線、水などが原因で発生し、導体と EGC 間に電気接続が形成される可能性があります。問題の原因を特定し、損傷した配線を交換するか、状態を修正します。

その他の低出力の原因としては、日陰や、傾きとコンパス方位 (アジマス角) が正しく調整されていないことなどが考えられます。ソーラー・パスファインダーを使用して日陰の原因を探し、可能であれば排除します。パネルが直接太陽に向くように、アレイの傾きと方位を変えることは実行不可能かもしれませんが、今後の参考のための基準を確立するため、傾きとアジマス角を知っておく必要があります。

大規模な PV システムでは、ソーラー・システムからの電力は、交流に変換された後に変圧器を通して昇圧され、一般的に、絶縁抵抗の低下が問題となる開閉装置と中電圧ケーブルに流れます。中電圧および高電圧ケーブルには、最大 10,000 ボルトの電圧をテストできる Fluke 1555 FC 10 kV 絶縁テスターを使用してください。

バッテリーを搭載したシステムには、Fluke 500 シリーズ・バッテリー・アナライザーを使用して、想定バッテリー電圧と充電状態を実際のバッテリーの状態と比較します。