正しく測定を行えるマルチメーターを使用することが重要です。これらの測定値の意味を知ることは、さらに重要です。正確性と精度により、取得した測定値が有用であることが保証されます。精度が高いほど再現性が向上し、正確性が高いほど測定値が完璧に近いことを意味します。

デジタルマルチメーターの正確性とは?
正確性とは、特定の動作条件下で発生する最大許容誤差を指します。正確性はパーセンテージで表され、表示される測定値が測定された信号の実際の(標準)値にどの程度近いかを示します。正確性を保証するには、一般的に受け入れられている業界標準との比較が必要です。
用途によっては、特定のデジタルマルチメーターの正確性が重要となります。たとえば、大部分の交流電源の線間電圧は、±5%以上変動することがあります。この変動は、例として、標準の115V交流コンセントにおける電圧測定で見られます。コンセントが通電されているかどうかを確認するためだけにデジタルマルチメーターを使用する場合は、測定の正確性が±3%のデジタルマルチメーターが適しています。
自動車産業用機器、医療用航空機材、または特殊な産業用機器の較正などの一部の用途では、より高い正確性が求められる場合があります。正確性が±2%のデジタルマルチメーターで100.0Vと測定結果が表示された場合は、実際の電圧が98.0~102.0Vの範囲に収まると考えられます。用途によってはこれで問題ない場合もありますが、より電圧差の影響を受けやすい電子機器では許容されません。
正確性には、基本的な正確性評価に追加される規定の桁数(カウント)も含まれます。たとえば、±(2%+2)という正確性は、マルチメーターに100.0Vという読み取り値が表示された場合、実際の電圧が97.8V~102.2Vであることを意味します。より正確性の高いデジタルマルチメーターは、多くの用途に使用できます。
Flukeの携帯式デジタルマルチメーターの直流の基本的な正確性は、0.5%~0.025%です。

デジタルマルチメーターの精度はどの程度か?
精度とは、同じ測定値を繰り返し表示するデジタルマルチメーターの能力を指します。
精度を説明するためによく使われる例は、射撃場の的に空いた穴の配置です。この例では、ライフルが的の中心に狙いを定め、毎回同じ位置から弾が放たれることを想定しています。
穴の間隔が詰まって集中していても的の中心から外れている場合、ライフル(または射撃者)は精度が高いけれども正確ではないと考えられます。
穴が的の中心の内側に集中している場合、ライフルは高精度かつ正確と言えます。穴が的全体に無作為に広がる場合、ライフルは高精度とも正確とも言えません(再現性もありません)。
状況によっては、精度、すなわち再現性が正確性よりも重要視されます。測定結果が再現可能な場合は、誤差のパターンを特定して補正することができます。
測定における分解能とは?
分解能とは、機具が検出および表示できる最小の刻み幅です。
電気に関係しない例として、2本の定規を思い浮かべてください。1/16インチのハッチマークが印されている定規は、1/4インチのハッチマークが印されている定規よりも分解能が高くなります。
1.5Vの家庭用バッテリーの簡単な試験を想像してみてください。デジタルマルチメーターの分解能が3V範囲で1mVの場合、電圧の読み取り中に1mVの変化を確認することができます。ユーザーは、3V範囲でボルトの1000分の1、すなわち0.001までの変化を確認することができます。
分解能は、メーターの仕様書では最大分解能として表示されることがあります。これは、メーターの最小範囲設定で識別できる最小値です。
たとえば、100mV(0.1V)という最大分解能は、想定される最高電圧を測定するためにマルチメーターの範囲を設定すると、電圧が小数第2位を四捨五入したボルト単位で表示されます。
測定値が設定範囲内にある限り、デジタルマルチメーターの範囲設定を下げることで分解能が向上します。

デジタルマルチメーターの範囲とは?
デジタルマルチメーターの範囲と分解能は関連しており、デジタルマルチメーターの仕様書で指定されている場合もあります。
多くのマルチメーターには、実施されている測定の規模に応じて適切な範囲を自動的に選択するオートレンジ機能が備わっています。これにより、有意義な読み取り値と最適な分解能の測定結果の両方が得られます。
測定値が設定範囲を超えると、マルチメーターにOL(過負荷)が表示されます。最も正確な測定値は、マルチメーターに過度な負荷をかけずに、可能な限り低い範囲設定で得られます。
範囲と分解能 | |
範囲 | Resolution(分解能) |
300.0 mV | 0.1 mV (0.0001 V) |
3.000 V | 1 mV (0.001 V) |
30.00 V | 10 mV (0.01 V) |
300.0 V | 100 mV (0.1 V) |
1000 V | 1000 mV (1 V) |
カウントと桁の違いとは?

カウントと桁は、デジタルマルチメーターの分解能を説明する場合に使用される用語です。今日では、デジタルマルチメーターを桁ではなく合計カウントで分類する方が一般的です。
カウント:デジタルマルチメーターの分解能は、カウントでも指定されます。カウントが大きくなると、特定の測定値の分解能が向上します。たとえば、1999カウントのマルチメーターでは、 200V以上の電圧を測定する場合に10分の1ボルトまで測定できません。Flukeでは、最大6000カウント(つまり、メーターのディスプレイでは最大5999まで表示)の3½桁のデジタルマルチメーターと、 20000カウントまたは50000カウントの4½桁のメーターを提供しています。
桁:Flukeの製品ラインには、3½桁および4½桁のデジタルマルチメーターが含まれています。たとえば、3½桁のデジタルマルチメーターは、3つの全桁数字と1つの半桁数字を表示できます。3つの全桁数字部分には、 0~9の数字が表示されます。最上位の桁とみなされる半桁数字部分には、1が表示されるか空白のままになります。4½桁のデジタルマルチメーターは、4つの全桁数字と1つの半桁数字を表示できます。つまり、3½桁のメーターよりも分解能が高いことを意味します。