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圧縮空気、ガス、真空のエアリークを検知し、隠れた収益を獲得する方法

電力効率, 漏れ検出, 電気測定の基礎, エネルギーマネジメント, トラブルシューティング

産業プラントや施設では、圧縮空気、ガス、真空システムが変換エネルギーの重要な供給源となります。電気などの他のリソースよりも扱いが容易なコンプレッサーは、今日の工場ならどこにでもあります。そして、機械やツール、ロボット、レーザー、製品処理システムなどの稼動に利用されています。

フルーク超音波エアリーク検知器

フルーク超音波エアリーク検知器

しかし、多くの圧縮空気、ガス、真空システムが、摩耗や不適切なメンテナンス慣習が原因で、本来の力を発揮できていません。何にも増して大きな無駄となるエアリークが常に発生している状態です。このエアリークは、機械の後ろ、接続ポイント、固定パイプの上、パイプの亀裂、ホースの摩耗部分などに隠れて発生している可能性があります。このような無駄が急速に積み重なり、ダウンタイムにつながる可能性もあります。

利用されない空気の不要なコスト

米国エネルギー省によると、圧縮空気ラインに径 3 mm のエアリークが 1 箇所あるだけで、年間最大 2,500 ドルのコストがかかる可能性があります。米国エネルギー省は、メンテナンスが行き届いていない平均的な米国の工場では、エアリークにより圧縮空気総生産量の 20% が無駄になっていると試算しています。ニュージーランド政府は、Target Sustainability プロジェクトの一環で、圧縮空気システム容量の 30 ~ 50% にシステムのエアリークがあると試算しています。圧縮空気、ガス、真空のエアリークをすばやく検知することは、隠れた収益を獲得できる 1 つの要因です。さらに、エアリークにより、設備投資、作業のやり直し、機器の停止、品質問題が発生する可能性もあり、これによりメンテナンス・コストも増加します。

エアリークによる圧力損失が増加すると、必要以上に大型のコンプレッサーを購入して、過剰に補償しがちです。これに伴い、設備投資とエネルギー・コストが大幅に増加することになります。さらに、システムのエアリークによりシステム圧が低下し、空気で稼働する機器の不具合につながります。そしてこれが、生産の遅延、予定外の機器の停止、品質の問題、耐用年数の短縮、コンプレッサーの不要なサイクルによるメンテナンスの増加などにつながる可能性があります。

一例として、米国内のあるメーカーのメンテナンス管理者は、エア・トルク・ツールに 1 つでも圧力の低下が発生すると、製品の欠陥につながるおそれがあると指摘します。「トルク不足や過トルクなど、機器のトルクに不具合があると、リコールが発生する可能性があります。また、非常に標準的なプロセスであるはずのものに、より多くの工数をかけることにもなります」と同氏は言います。「収益や機器の損失により、費用が発生することになります。最悪のシナリオでは、納品できなかったことにより、需要を失うおそれもあります。」

公益事業、産業界、政府機関のすべてが、圧縮空気システムをコスト削減の可能性のある供給源として見ていても不思議ではありません。エアリークは無駄につながります。このようなエアリークを修復することで、費用を節約して、システムの容量増に伴う光熱費の増加を防ぐことができます。

困難なエアリークの発見と修復

多くの工場や施設には、エアリーク検出プログラムがありません。エアリークを発見し修復することは容易ではありません。無駄の量を定量化してコストを判断するには、エネルギー分析装置とロガーを使用して空気システムを監査するエネルギー専門家またはコンサルタントが必要です。エアリークを排除することによる年間コスト削減額を体系的に計算することで、このようなプロジェクトを進めるための強力なビジネス・ケースを策定できます。

圧縮空気システムのエネルギー監査は、多くの場合、産業界、政府、非政府組織 (NGO) とのパートナーシップを通じて実施されます。これらのパートナーシップの 1 つである「圧縮空気の課題 (CAC)」は、このような種類のグループの自由参加による協力体制です。唯一の目標は、特定の製品に偏らない情報と教育用資料を提供して、業界全体で、最大限持続可能な効率での圧縮空気の生成、使用が可能になるようサポートすることです。

超音波によるエアリーク検出が非効率的な理由

主流のエアリーク検出方法は、残念ながらとても原始的です。長年使用されている方法は、シューという音を聞くことです。シューという音は、多くの環境ではほとんど聞こえません。また、エアリークが疑われる部分に石鹸水を吹きかける方法もありますが、汚れるうえ、滑る危険性が出てきます。

コンプレッサーのエアリークを検出するための現在の主要ツールは、超音波音響検出器です。これは、エアリークに関連する高周波音を認識するポータブル電子機器です。一般的な超音波検出器は、エアリークを検出するのに役立ちますが、使用に時間がかかり、一般的に、修理作業員が使用できるのは計画的なダウンタイム中のみです。このとき、他の重要な機械をメンテナンスした方が、彼らの時間の有効活用になるかもしれません。また、このような装置を使用する際には、装置の近くに作業者を配置してエアリークを発見する必要があります。そのため、天井や他の装置の背後など、手の届きにくい場所での使用が困難になります。

石鹸水または超音波検出器を使用してエアリークを検出するのにかかる時間に加えて、このような技術を使用して機器の下や頭上のエアリークを発見する際には、安全上の問題が発生する可能性があります。はしごを上ったり、装置周辺で腹ばいになったりすることは、危険をもたらす可能性があります。

革新的な圧縮空気検出

騒音の多い環境で機器を停止せずに、最大 50 m 離れた場所からエアリークの位置を正確に特定できるエアリーク検出技術があるとしたらいかがでしょうか。フルークはこれを実現する産業用カメラを開発しました。業界のメンテナンス管理者は、Fluke ii900 産業用超音波カメラを圧縮空気のエアリークを発見する「革新的な製品」と称しています。

この新型の産業用超音波カメラは、従来の超音波機器よりも広い範囲の周波数を検出可能で、SoundSight™ テクノロジーを新たに採用しています。赤外線カメラがホットスポットを検出する要領で、エアリークを高感度で視覚的にスキャンします。

ii900 には、超小型の高感度マイクを備えた音響アレイが内蔵されており、可聴域と超音波域の音波を検出します。ii900 がエアリークの可能性のある箇所で音の発生源を識別して、独自のアルゴリズムを適用し、音をエアリークとして解釈します。その結果、SoundMap™ イメージが作成されます。これは、可視光線画像に重ねて表示されるカラー・マップで、エアリークが発生している場所を正確に示します。結果は 7 インチ LCD 画面に静止画像またはリアル・タイム・ビデオとして表示されます。ii 900 では、文書化またコンプライアンス目的で、画像ファイル最大 999 個またはビデオ・ファイル最大 20 個を保存できます。

大きな領域をすばやくスキャンできるため。他の方法よりもずっと迅速にエアリークを発見できます。また、輝度と周波数の範囲をフィルター処理することもできます。ある大規模製造工場のチームは最近、2 台の ii 900 プロトタイプ・ユニットを使用して、1 日で 80 箇所の圧縮エアリークを発見しました。保守管理者は、従来の方法を使用していたら、この数のエアリークを検出するのに数週間かかっただろうと語ります。また、エアリークを迅速に発見して修復することで、潜在的な機器停止時間を削減できました。この工場では、生産性の低下により 1 時間あたり約 10 万ドルのコストがかかっていた可能性があります。

エアリークが検出される場所:

  • カップリング
  • ホース
  • チューブ
  • 継手
  • ねじ式パイプ接合部
  • クイック・ディスコネクト
  • FRL (フィルター、調整器、注油器からなるユニット)
  • 結露トラップ
  • バルブ
  • フランジ
  • パッキン
  • エア・タンク

 

空気の損失量

圧縮空気、ガス、真空システムのエアリークを制御する最初のステップは、エアリークの負荷を推定することです。ある程度のエアリーク (10% 未満) は想定の範囲内です。それを超える分は無駄だと考えられます。最初のステップとして、改善のベンチマークとして使用するために現在のエアリークの負荷を特定します。

エアリークの負荷を推定する最良の方法は、制御システムがベースとなります。スタート/ストップ制御を備えたシステムをお持ちの場合は、システムに何も負荷がかかってないとき (営業時間外やシフト外) にコンプレッサーを始動してください。次に、コンプレッサー・サイクルを数回読み取り、負荷のかかったシステムをアンロードする平均時間を測定します。機器の非稼働時、エアリークによりシステムが無負荷になります。

エアリーク (%) = (T x 100) ÷ (T + t)T = 負荷時間(分)、t = 無負荷時間 (分)

より複雑な制御戦略を備えるシステムでエアリークの負荷を見積もるには、すべての二次レシーバー、電源、配管を含む容積 (V、単位: 立方フィート) から下流に圧力計を配置します。エアリークを除き、システムに負荷がかかっていない状態で、システムを通常の作動圧力 (P1、単位: psig) に上げます。第 2 の圧力 (P2、P1 の値の約半分) を選択し、システムが P2 に下がるまでの時間 (T、単位: 分) を測定します。

エアリーク (l/s フリーエア) = [(V x (P1-P2) ÷ (T x 101325)] x 1.25

1.25 の乗数で、通常のシステム圧力へエアリークを補正し、これにより、システム圧力の低下によるエアリークの減少を計算します。

エアリークを効率よく修復、修理すれば、空気駆動技術をベースとした業務で大幅なコスト削減につながります。エアリークを修理すると、企業はエネルギーを節約できるだけではなく、生産レベルを向上して、機器の寿命も延長できます。