製品概要: FPG8601 自動校正システム
動作原理
測定
FPG8601 は、ピストンシリンダーの有効面積に掛けられた圧力が、それに比例する大きさの力に変換されるという、広く知られているピストン・ゲージの原理で動作します。ただし、圧力から発生する力は、重力加速度を受ける分銅とのバランスではなく、ピストンが取り付けられたロード・セルとバランスする力によって測定されます。ピストンシリンダーは上部と下部の加圧室に取り付けられているため、圧力を定義する際の基準圧力を変更することができます(ゲージの場合は大気圧、絶対圧の場合は真空)。上部と下部の加圧室付きのロード・セルのゼロ調整を共通の圧力で行うと、ピストンの重さと測定圧力以外の力が取り除かれるため、圧力測定をゼロから行うことができます。印加された差圧の値は、ピストンシリンダーの有効面積と、ロード・セルで測定された正味の力の値から計算されます。
ピストンをシリンダー内で回転させながら中心合わせを行う場合の不安定性と機械的複雑さを避けるために、ピストン・シリンダー間の間隙に独立した潤滑用のガス圧力を流すことにより、FPG ピストンの中心決めを行います。この間隙は円錐形で、ピストンの末端方向に向かって対称的に狭くなっています。ピストンとシリンダーの間の間隙は 1 ~ 6 μm、潤滑用圧力は基準圧力よりも 40 kPa 大きい値で、これにより測定用加圧室に流れ込むガスは非常に少なくなっています(合計で 1 sccm 未満)。ピストン全体に印加される力は、ピストンを重心位置で保持するジンバル・カップリングを通してロード・セルに伝えられます。ピストン・シリンダーの潤滑用のガス供給のために、接続システム用経路も使用されます。ロード・セルは、潤滑用のガスが流れる気密加圧室の内部に収められています。ロード・セル加圧室型の設計によって温度が一定に保たれ、潤滑用のガスによって相対湿度が保たれます。
制御
FPG8601 圧力コントローラーは、流量制限部で流量の調整を行うことによって動作します。制限部の上流側は上部 FPG 加圧室に、下流側は下部 FPG 加圧室と大気側または絶対圧モード動作用の独立した真空ソースに接続されます。異なるコンダクタンスを持つ流量制限部がコントローラーに内蔵されており、圧力レンジに適切な流量制限部が自動で選択されます。マス・フロー・コントローラー(MFC)が 2 台(1 台は圧力の粗調整用、低圧力レンジ用のもう 1 台は微調整用)並列に接続され、フィードバック・ループ内の流量を調整します。制御は、圧力設定ポイントと FPG 圧力測定値の差分に基づいて行われます。2 段目が流量制限部の下流側を参照する 2 段式の圧力調整器は、マス・フロー・コントローラーに安定した入力圧力を供給します。
自動化による操作
FPG8601 は、Windows® ベースのシステム・コントローラーを内蔵しています。システム・コントローラーは、FPG8601 のハードウェアおよび試験中のデバイスと通信します。FPG Tools™ ソフトウェアは、FPG の動作を監視・制御し、試験中のデバイスのデータ取得を行う完全自動化の無人試験シーケンスなど、高いレベルの機能を広範囲にサポートします。FPG および試験中のデバイスのデータは全て区切り文字で分けられたデータ・ファイルに記録され、分析用のアプリケーションに容易にダウンロードできます。FPG Tools ソフトウェアには以下の機能が含まれます。
- 測定モード(ゲージ/絶対値)の変更
- ロード・セルの自動ゼロ調整と自動スパン
- 時間調整を平均化するデータ・ポイント
- 動作状態が過度に変化した場合のアラーム
- 低絶対圧での熱蒸発補正
- 試験用デバイスの設定
- 試験プロシージャーの定義と保存
- 完全自動化の試験実行
- 試験結果のリアルタイム・プロット
ゲージ測定モード、絶対圧測定モード、および絶対差圧測定モード
FPG8601 には、以下の 3 種類の測定モードがあります。
- ゲージ・モード:FPG の下部加圧室と試験の「低圧」側は相互に接続されており、大気に開放されています。
- 絶対圧モード:FPG の下部加圧室は真空で、残圧は真空計で測定されます。このモードは、気密された絶対圧の試験用デバイスの校正で使用します。
- 絶対差圧モード:FPG の下部加圧室と試験の「低圧」側は相互に接続されており、真空状態です。このモードは、試験用デバイスの真空に対する差圧の校正で使用します。
特別な環境要件を必要としないベンチ・トップ・システム
FPG8601 は、高品質の 2 m 長ラボ用ベンチに取り付けることができます。圧力コントローラーはほとんどの場合ベンチ下に設置されます。絶対圧機能を装備している場合は、真空ポンプの位置を考慮する必要があります。必要に応じてカスタム取り付け用ベンチを提供できます。
FPG8601 の動作に必要な環境要件は、高度なメトロロジー・ラボで一般的なものです。
据付けとトレーニング・サービス
新規 FPG8601 の据付けの場合、3 ~ 5 日間の据付けとトレーニング・サービスを推奨します。このサービスには、FPG8601 システムの設定および試験と共に、一般的な試験の実行を含む操作方法とメンテナンス方法に関するユーザーのトレーニングが含まれます。トレーニングは、納入の前に Fluke Calibration (アリゾナ州フェニックス)の施設で、または納入後に設置場所で行うことができ、両方を行うことも可能です。
こちらの製品については日本国内での窓口は株式会社大手技研となっております。
仕様: FPG8601 自動校正システム
一般 | |
電源仕様 | FPG8601 85 ~ 264 VAC、50/60 Hz、最大 60 VA VLPC 85 ~ 264 VAC、50/60 Hz、最大 70 VA |
標準使用温度範囲 | 20 ~ 26 °C |
環境温度安定度 | 最大比率 0.1 °C/分 |
重量 | FPG8601 プラットフォーム 30 kg FPG8601 端末 2 kg VLPC 圧力コントローラー 41 kg |
寸法 | FPG8601 プラットフォーム 高さ 53 cm × 幅 36 cm × 奥行 35 cm (21 インチ × インチ × 14 インチ) FPG8601 端末 高さ 12 cm × 幅 15 cm × 奥行 20 cm (4.7 インチ × 6 インチ × 8 インチ) VLPC 圧力コントローラー 高さ 31 cm × 幅 51 cm × 奥行 53 cm (12.2 インチ x 20 インチ x 21 in)のコンパクトな |
システム・コントローラー | FPG Tools™、Windows® OS、FPG に対する RS232 および IEEE-488 インターフェース、および試験用デバイスのデータ取得を実行 |
全圧力レンジ | 0 ~ 15 kPa ゲージ、絶対圧、絶対差圧 |
試験媒体 | N2 または空気 |
モード変更時間 | 絶対圧からゲージ: 30 分 ゲージから絶対圧: 1 時間 |
振動 | 従来のピストン・ゲージと同じ、真空ポンプはフレキシブル・チューブによって接続する必要あり |
圧力供給 | ピストンシリンダー潤滑ガス(FPG8601): 700 ~ 800 kPa、清浄乾燥 N2 または空気 FPG 基準真空圧(絶対圧モード用):ターボ・ポンプ:標準値 378 m3/時間、最終圧力 8.10 ~ 6 Pa 回転翼式ポンプ: 16.5 m3/時間、最終圧力 0.2 Pa VLPC 供給機:: 700 ~ 800 kPa、清浄乾燥 N2 VLPC 真空圧: 10 m3/時間 @ 0.5 Pa 駆動用エア(FPG8601 および VLPC): 400 ~ 700 kPa、作業室用エア |
圧力接続配管 | 試験用高圧(FPG8601): KF16 試験用低圧(FPG8601): KF16 真空基準圧(FPG8601): KF25 真空圧(FPG8601): 1/8 インチNPT F 駆動/潤滑用(FPG8601): 1/8 インチNPT F 供給用(VLPC): 1/8 インチNPT F 駆動用(VLPC): 1/8 インチNPT F 真空圧(VLPC): KF25 |
圧力測定 | |
全圧力レンジ | 0 ~ 15 kPa ゲージ、絶対圧、絶対差圧 |
温度効果 | 機器の温度は監視されており、温度変化の率や数値が動作に影響を与えるほど大きい場合は警告される |
分解能 | 標準値: 0.010 Pa 高分解能オプション: 0.001 Pa |
圧力測定の標準的な不確かさ | 標準ゲージ:ゲージ・モード、絶対差圧モード : ± (0.020 Pa + 30 ppm rdg) 絶対圧モード: ± (0.025 Pa + 30 ppm rdg) 高分解能オプション:ゲージ・モード、絶対差圧モード: ± (0.005 Pa + 30 ppm rdg) 絶対圧モード: ± (0.008 Pa + 30 ppm rdg) |
絶対圧モードでの標準残留圧 | ターボ分子ポンプ付き: 0.04 ~ 0.1 Pa 回転翼式ポンプ: 0.3 Pa ~ 0.4 Pa |
圧力制御 | |
制御レンジ(Pa) | ゲージ・モード: オーバーラップする 5 種の制御レンジ 最低圧力: 0 最低制御圧力: 0.1 Pa 絶対圧モード: オーバーラップする 5 種の制御レンジ 最低圧力: 0.4 ~ 1 Pa 最低制御圧力: 2 Pa |
制御精度 | 標準値: ゲージ・モード: ± (0.020 Pa + レンジの 100 ppm) 絶対圧モード: ± (0.020 Pa + レンジの 30 ppm) 高分解能オプション: ゲージ・モード: ± (0.005 Pa + レンジの 60 ppm) 絶対圧モード: ± (0.020 Pa + レンジの 30 ppm) 注:制御精度は最悪値です。低いレンジでの絶対圧モードの定数は小さい値となります。 |
公称試験容積 | ゲージ・モード:最大 20 cc/ 側(高圧および低圧) 絶対圧モード:最大 500 cc/ 側(高圧および低圧) |
標準圧力設定時間 | 1 ~ 2 分、試験容積により異なる |
ピストンシリンダー | |
公称サイズ | 直径: 35 mm 面積: 10 cm2 |
ピストン材料 | タングステン・カーバイド |
シリンダー材料 | タングステン・カーバイド |
取り付けシステム | 非回転式、独立自己センター決め、中心供給型、潤滑用圧力 |
ピストンシリンダーの間隙 | 対象円錐形間隙、二重テーパー(中心部潤滑ポイントで 6 ミクロン、円錐端で 1 ミクロン) |
潤滑用ガスの品質 | 正浄乾燥 N2 または空気、搭載型調整器により 40 ~ 70 % R.H. |
潤滑用ガスの圧力 | ゲージ・モード: 40 kPa ゲージ 絶対圧モード: 40 kPa (絶対圧) 潤滑用ガス流量:上部・下部加圧室に対し合計 < 1 sccm |
二次測定 | |
ピストンシリンダー(°C) | レンジ: 0 ~ 40 分解能: 0.01 不確かさ: ± 0.1 |
残留真空圧(Pa) | レンジ: 0 ~ 13 分解能: 0.001 不確かさ: ± (0.5 % rdg + 5 mPa) |
監視用測定 | |
潤滑用ガスの温度(°C) | レンジ: 0 ~ 40 分解能: 0.1 不確かさ: ± 0.2 |
潤滑用ガスの圧力(kPa) | レンジ: 0 ~ 200 (絶対圧) 分解能: 0.001 不確かさ: ± 0.1 |
潤滑用ガスの湿度(%RH) | レンジ: 5 ~ 95 分解能: 1 不確かさ: ± 10 |
こちらの製品については日本国内での窓口は株式会社大手技研となっております。
モデル: FPG8601 自動校正システム
フォース・バランス型ピストン・ゲージ、標準分解能
内容:
- FPG8601 プラットフォーム
- FPG8000 ターミナル
- FPG8601 10 kPa/kg ピストン・シリンダー・ゲージ・モード動作機能
- 標準分解能(10 mPa)
- VLPC 圧力コントローラー
- VLPC と FPG8601 プラットフォーム間の相互接続
- システム・ソフトウェア付きシステム・コントローラー、RS232 ポート 2 個、および IEEE-488
- ピストン挿入工具
- 操作および保守マニュアル
- A2LA 認定校正レポート
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