日本

無負荷での整流器の測定

記者 Chuck Newcombe

189は、2つの方法で交流電圧を測定できるFluke初の携帯式DMMでした。交流電圧機能では、測定機能が大部分のFluke製DMMと基本的に同じでしたが、189では、直流電圧機能で交流電圧を測定することもできます。これは、交流と直流の合成信号の真の実効値をメーターに表示させるシステムの一部です。私は、2つの交流機能間の読み取り値を誰かが比較するのは時間の問題であることは分かっており、実際それまでに時間はかかりませんでした

2000年の暮れごろ、Fluke 189が市場導入されてすぐのことでした。あるお客様から、20A以上の電流を生成可能なブリッジ整流器の回路の出力での交流リプル電圧の測定について電話でお問い合わせをいただきました。案の定、このお客様は、両方のモードで測定していました。

お客様は、読み取り値の小さな違いに気付き、メーターにどこかおかしな点がないか確認するために弊社にお電話されたのです。私は、電話を受けた担当者に、読み取り値の差が各機能の総合仕様書の許容範囲を超えているかどうかを確認するよう伝えました。また、測定中の回路の詳細とお客様が取得した測定値を確認するようこの担当者に依頼したため、それらを見直して、弊社の工学研究所で値の差を検証してみました。読み取り値の差が通常の許容値よりもはるかに大きかったため、原因をじっくり考える必要がありました。

すると、測定中の回路が安価なバッテリー充電器の出力であることが分かりました。私は、変圧器とブリッジ整流器しか箱に入っていなかったのではないかと考えました。これが本当で、出力に負荷が接続されていなかったとしたら、私たちが望んでいたほぼすべての読み取り値を得ることができると確信しました。なぜならば、ダイオード全体に漏れ静電容量と漏れ抵抗があり、これにより負荷が高インピーダンスのメーターのみの場合に興味深い結果が出ることが分かっているからです。弊社は、電話をいただいたお客様ともう一度話し、負荷(充電対象のバッテリー)を出力の両端に接続してから、測定値を再度読み取っていただくようお願いしました。お客様がこれを行ったところ、より合理的で一貫性のある結果が得られました。

この時点で、2つの測定モードの違いに注目し、メーターが奇妙に思える挙動を取る原因を追求しました。原因は弊社が見つけましたが、約7年前の出来事のため、私の方で充電回路と同様のレプリカを(たった25ドルほどで)実際に作成し、このコラムのために試験を再現しました。そのため、試験結果は鮮明に記憶しています。私は189を持っていなかったため、他の2つのメーター、すなわちより古いFluke 77と信頼のおける私の87-Vを使用しました。

まず、87-V を使用して、ステップダウントランスの出力で交流電圧を測定しました。結果は14.15Vでした。次に、ブリッジ整流器の無負荷の出力で交流電圧を測定したところ、結果は約0.7Vでした。ここまでは問題ありません。ここで、77の入力を並列に接続し、直流電圧モードに設定しました。77は、直流4.4Vを示しました。これは、12V充電器に見立てたものに対し予測できる値ではありませんが、87-Vの交流電圧の読み取り値は約0.4Vまで低下しました。続いて、整流器の出力に 20kΩの抵抗負荷を接続すると、読み取り値がすべて予想される値まで低下しました。これは一体どういうことでしょうか?

ほとんどのFluke製DMMの交流電圧入力は、直流を遮断するための大容量コンデンサと直列に並んだ10メガオーム抵抗器です。同じメーターの直流電圧機能は、10メガΩ抵抗器だけであり、直列コンデンサがないため、整流器回路に異なる負荷を提供します。この負荷により、少量の直流電流を流すことができます。この差がブリッジ整流器のダイオード全体の漏れ静電容量と漏れ抵抗にもたらされると、興味深い波形が発生します。これこそが、私が見た奇妙な結果をもたらすと考えられる原因です。

実験の最終段階では、87-Vのその他2つの測定機能を利用しました。ブリッジ整流器を変圧器から取り外して、接合部全体の静電容量を測定しました。結果は、0.6nF付近(試験リード線の静電容量をゼロ設定後)でした。次に、同じオームスイッチ位置の雑音抑制機能を使用して、逆バイアスダイオードの漏れ抵抗が約1000メガオームであることを確認しました。お気に入りのメーターを使ってこれらのテストをすべて行うことができたのは、私にとって喜ばしいことでした。

結果、以下の教訓を得ました。

異常な、または予期しない測定結果を得られた場合は、まず見てすぐに確認できる異常、たとえば短絡や断線がないかを確認すること。関連する配線が要因となっていることがあります。次に、メーターの入力回路について考えてみること。今回の事例のように、異常な結果の原因と考えられる差異が存在するかを確認すること。

このような問題に遭遇した場合、メーターとそのマニュアルを調べ、その働きについて少しばかり理解しておいても損はありません。